俳人、中村草田男が「降る雪や明治は遠くなりにけり」と読み、ホトトギスに掲載されたのは昭和6年のことです。明治が終わり、わずか20年で、明治は遠くなってしまったのです。

今、昭和から36年が過ぎて、改めて昭和は遠くなったなあ、と思いました。私のようないわゆる団塊の世代と言われ、ベビーブームと言われた昭和22~25年頃に生まれた子どもは、日本の人口ピラミッドの中でも特異な位置を占めています。ひたすら人数の多い同年代のおかげで、幼稚園の頃から競争が激しく、高校や大学の競争率は現在想像も出来ないほどだったのを覚えています。

この数多い若者が、戦後日本復興の中にあって、若い労働力として大きな貢献をしたと思っているのですが、どうでしょうか。

今や団塊世代は後期高齢者として、高齢社会の中心となっていますが、思えばこの世代は、昭和を40年ほど生きてきたのです。映画『ALWAYS 三丁目の夕日』で山崎貴監督がつくり上げた昭和30年代の町並み(特別展 山崎貴の世界 映画で描かれた戦争とVFX (2024年7月4日(木)~11月24日(日)で展示中)は、私たちが小学生として過ごした町なのです。私自身、映画の中で建設が進んでいる東京タワーが、まだ展望台までしか出来ていないために、遠目には台形だった頃の姿を覚えています。

「特別展 山崎貴の世界 映画で描かれた戦争とVFX」 『ALWAYS 三丁目の夕日』夕日町三丁目・表通りの町並み

では、この戦後の焼け跡からの復興という、戦後昭和の背景はどのような時代だったのかということになります。復興とは、破壊があっての言葉だからです。満州事変以来、戦争の絶えなかった昭和20年までと、終戦以後の平和日本の驚異的発展を見るとき、これが同じ時代とは思えないほどの変容に驚きます。

この日本史の中でも前後に例のないほどの変革の時代を生きたのが昭和天皇だったのです。

このような驚異的時代である昭和と昭和天皇の事績を後世に伝えるため、平成17年、大和ミュージアムの開館と同じ年に開館したのが「昭和天皇記念館」です。

「昭和天皇記念館」は、中央線立川駅近く、旧立川飛行場跡地に作られた国営昭和記念公園の中に建設された資料館で、昭和天皇の御事績を中心に、驚くほど貴重な歴史資料が展示されています。

この「昭和天皇記念館」が、来年の令和7年に開館20年を期してリニューアル工事を行うに当たり、今回クラウドファンディングによる寄付を募っています。

大和ミュージアムも昨年、呉海軍工廠で使用されていた旋盤を入手するに当たり、クラウドファンディングによって多くの方々のご支援を受けましたが、私どもにとっては、単に経費的な側面ばかりではなく、日本中の多くの人が大和ミュージアムの事業をご理解ご支援してくれている、ということがはっきりと表れたことが一番の成果であり喜びでした。

同じように、「昭和天皇記念館」におけるクラウドファンディングは、昭和天皇の御事績と、背景としての昭和という時代の保存継承には、多くの国民の協力を頂いて行うことが、相応しいとの思いからの事業であると理解しています。

このようなことから、旧知の関係である昭和天皇記念館の梶田昭宏副館長からご依頼をいただき、クラウドファンディングの推薦文を寄稿させていただきました。せっかくの機会だと思いますので、私の推薦文と、クラウドファンディングの募集ページのアドレスを添付しますので、興味のある方は見ていただきたいと思います。

 

「昭和天皇と昭和の記憶を後生に伝えるために」への賛同者メッセージ】 

戸高一成 呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)館長

「昭和天皇と昭和の記憶を後世に伝えるために」との目的のもと、平成17年(2005)に設立された昭和天皇記念館は、2025年に開館20周年を迎えることになります。実は私が勤務する大和ミュージアムも平成17年に開館し、広く深い昭和という時代を伝える努力をしてきました。思えば昭和天皇の在位は64年。明治維新から昭和64年までが121年であったことを思えば、昭和天皇はその明治、大正、昭和三代の年月の過半を昭和という時代と共に過ごされたことになります。昭和時代は、昭和20年の終戦を挟んだ時期をはじめ、日本人にとって、永遠に忘れることの出来ない激動と言って良いほどの重要な歴史を刻んだ時代なのです。このたび、昭和天皇記念館がリニューアルを行うにあたり、クラウドファンディングによる寄付金募集を行うことは、多くの国民の賛同、協力のもとに昭和天皇と昭和という時代を後世に伝える事業を行うということなのです。このような形は昭和天皇記念館の特別事業として、本当に相応しいことなのだと思います。一人でも多くの人々の参加により、素晴らしい成果を実現することを祈っています。

 

「昭和天皇と昭和の記憶を後生に伝えるために」

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