まず、このたびの、呉海軍工廠で使用した大型旋盤の保存についてのクラウドファンディングによる皆様の大きなご支援につきまして、大和ミュージアム関係者一同、心からのお礼と、深い感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。

 この大型旋盤は、大和ミュージアムの開館準備当時、収蔵展示したいと思い、呉市から入手を打診しましたが、当時この旋盤は現役で活動していたために、残念ながら諦めた資料でした。当時、呉海軍工廠で使用したことが明らかな大型機械は、広島大学工学部が使用していた、大型強度試験機と、この大型旋盤で、私としては可能ならば両方ともほしいと夢見ていた物です。

 2010年に広島大学工学部から、大型試験機で行っていた強度試験などは、コンピュータで行うようになったので、大型試験機は処分することになり、ついては、大和ミュージアムとして必要ならば、ネームプレートなどの記念品的なパーツを差し上げても良い。との連絡があり、私が工学部に行き、大型試験機と対面しました。初めて見る大型試験機は見上げるような巨大な鉄の塊でした。この機械は強度試験機、いわゆる破壊試験機で、その重量は何と400トン。圧縮3000トン、引っ張り1500トンという能力の試験機です。この試験機は、その大きな能力を生かして戦後も新幹線や本四橋の強度設計に役立った機械です。私は、思わず全部頂けませんか、とお願いして担当者を驚かせてしまいました。その後、広島大学でご検討頂き、学長立ち会いの下、2011年に呉市に寄贈して頂くことになったのです。現在は市の土地に仮置きしています。

 そうした中、大和ミュージアムの開館20年を目標に、大規模リニューアルを進めているところに、今回の大型旋盤の寄贈の話があり、本当に驚きました。私にとって、この二つの機械が重要であると思う理由は、大型強度試験機は、造船設計の強度を確認する理論的な研究の機械なのです。そして、この試験機などによって確認された設計に基づいて、現実に構造物を造り上げる工作機械の一つが大型旋盤なのです。つまり、この二つの巨大な機械は、戦艦大和を建造した理論研究と現実の製造能力のシンボルとも言うべき資料なのです。大和ミュージアムのリニューアル計画中に、このような資料が揃うのは、大げさでは無く奇跡的なことであり、大和ミュージアの存在価値を一層高めるものと思います。

 ただ、ご存じのように、なかなか予算的に難しいために、今回クラウドファンディングでの、入手の協力をお願いたものです。結果は最初に書きましたように驚くほどの賛同者を得ることが出来ました。皆様の厚いご支援には、感謝しています。

 この大型試験機400トン、大型旋盤200トンという、気の遠くなるような「重い」資料を、どのように展示するか、という問題に、大和ミュージアム関係者一同直面して、頭を悩ませている現在ですが、私は困難な仕事ほどやり甲斐があるというものだと思っています。

 大型旋盤は、予想外の寄付を頂いたことにより、当初の予定よりも一層充実した保存施設を建設することが出来ることになったことで、展示完成予定は、当初予定の来春から、来年度中を目処に進めることになりますが、この延期は、貴重な資料の、より良い保存のためのものですので、ご容赦頂きたいと思います。

 皆様と、華やかなお披露目のイベントを開催できることを楽しみにしています。