早い、早い、

時間の経つ早さが身に染みた一年でした。

大和ミュージアムは令和7年4月23日に開館20周年を迎えます。私は開館一年前の平成16年に大和ミュージアムの工事が始まったばかりの頃、呉に着任したので、来年は呉で20年過ごしたことになります。生まれた子どもが成人になるほどの時間が経過したことを思うと、なんとも言いようのない気持ちになります。

大和ミュージアムの20年は、ドラマにしたいほどの喜びと、いくつもの苦難がありました。喜びは、開館以来私自身が驚くほどの来館者に恵まれたことであり、苦難は、集中豪雨による土砂災害や、新型コロナウイルス感染拡大によって休館を余儀なくされたことなどです。

それらの困難を乗り越えての20年ですから、多くの感慨に浸るのも無理の無いことです。

幸いにして、大和ミュージアムは当初の想定を超えた来館者を迎えてきましたが、20年の間には、新しい資料の収蔵や、多くの新事実の発見により、いくつもの手直ししたいところが出てきたことも事実です。これらのことを考え、数年前から大規模リニューアルの案があったのですが、休館してしまうことで多くの来館希望者をがっかりさせるのも難しいので、リニューアル計画は延び延びになってきたのです。

そうは言っても、やはり開館20周年ということを考えると、もう躊躇できないと思い、新原市長、市議会の決断をいただき、約一年間の休館で、本格的なリニューアル工事計画が実現したのです。私としては大変有り難いことと思うと同時に、大きな責任にプレッシャーを感じています。

しかし、大和ミュージアムが生まれ変わるほどのリニューアル事業は、10年に一度、20年に一度というほどの大きな事業ですから、張り切らざるを得ません。あれもしたい、これもしたいという気持ちで、学芸担当者、関係者全員が頭を絞ってプランを練った結果が実現する日を楽しみに待つ気持ちです。

では、どのように変わるかと言えば、メインテーマである呉市の歴史、技術の歴史等を紹介する展示には変わりないのですから、展示の基本は変わらないのです。しかし、その表現の仕方はたくさんあるので、新しい資料を有効に取り入れて、より良い、より印象深い、より分かりやすい展示を心がけます。

一見変わらないように見えて大きく変わるのが、館の中央、大和ひろばの10分の1戦艦「大和」です。大和ミュージアムのシンボルとして建造されたこの大和は、20年前における最善の考証に基づいて建造されましたが、その後の海底調査の映像などから、新しい発見がありましたので、細かな修正をすることにしています。何処を直したのか分からないほどの細かな修正もありますが、ここに大和ミュージアムの「こだわり」を知っていただきたいのです。この大和の改装工事は、実際の工事中の姿をガラス壁超しに見ていただけるように、館の外に観覧通路を準備しますので、実物の大和の改装工事のような、大がかりな工事の雰囲気を味わってください。

また、従来は十分な展示が出来なかった、広工廠(航空技術廠)の展示を充実させます。広は日本における航空機の研究開発製造までを行った、日本有数の航空機技術の歴史の中心であり、呉の造船技術と併せて、日本の技術発展の重要な地域でした。特に大型金属製航空機の開発に力を入れ、世界的傑作機と言われる、後の二式大型飛行艇につながる飛行艇の開発に関しては中心的な施設でした。

いろいろ書いているときりがありませんが、最後に、約一年の休館の間も、興味深い展示を見ていただくために、「大和ミュージアムサテライト」をオープンします。これは、言わばミニ大和ミュージアムで、戦艦「大和」に搭載されていた零式観測機を実物大で再現した機体も展示します。

零式観測機は船と飛行機の要素を持つ水上機であり、実際に大和に搭載されて働いていたことから復元展示が実現したのです。零式観測機と大和の関わりは大きく、大和自体の設計にもこの搭載機が影響を与えているのです。

また大和ミュージアムサテライトでは、デジタル端末で多くの資料を閲覧していただくなどの展示を準備しています。

私としては、20年前の開館準備と開館直前の目の回るような毎日を思い出しては、あの頃は若かったなあ・・と思いながら、「さて、もうひと頑張り・・」と思っています。

間もなく、大和ミュージアムが一新される新年を、大きな期待を持って皆様と迎えたいと思います。

皆様、良いお年をお迎えください。

そして、大和ミュージアムに、今までと変わらないご支援をお願いいたします。