現在開催中(~2020年1月26日まで)の企画展「海底に眠る軍艦―「大和」と「武蔵」-」は、連日多くの方に見学していただき、有り難い事と思っています。7月25日は、開催初日から3ヶ月経たないうちに、10万人目のお客様をお迎えすることが出来て、いつもの感謝のセレモニーを行いました。
もう一つ、この夏の大きな話題は、映画「アルキメデスの大戦」が封切られたことです。
戦艦大和の建造を阻止するために奮闘する海軍主計少佐の話ですが、やはり本当の主人公は戦艦大和ですね。(館長は、大和建造推進派ですから)
原作も面白く、原作者の三田紀房さんとは、雑誌で対談をしたのですが、「よく調べた上で、上手にコミックに作り直しているなあ」と思いました。無論、私は大和ミュージアム館長ですから、原作では大和を造ろうとする平山忠道技術中将は、まあ悪者なのですが、対談の最後に、「平山さんのモデルは、平賀譲技術中将ですから、あまり悪者にしないでくださいね。」と言っておきました。おかげで(?)映画では、まあまあのキャラになっていました。
さて、映画化されることになり、呉でもロケがあったりして、完成を楽しみにしていましたところ、急に封切り直前イベントを大和ミュージアムで行うと言う話になり、映画公開前に、大和ミュージアムに、主演の菅田将暉さんを迎えて、大掛かりなイベントが行われました。抽選で参加したファンは600人近くで、一階の大和ひろばが埋まりました。当然ですが、95%くらいが若い女性で、大和ミュージアム開館以来の華やかな館内風景でした。
その中で、一部分私と菅田さんと大和について話し合う箇所があり、いくつかの質問を受けたのですが、大和の建造費について聞かれ、「ああ、この映画は、大和の建造費がポイントだったなあ」と思いました。そこで話したことを少しだけ掻い摘んで話すと、映画は、大和建造を推し進めていく側が、対立する空母の計画よりも安い予算を提示したことから、主人公が、この建造費のインチキを暴くために数学の才能をフルに使って奮闘する・・というのがストーリーなのですが、菅田さんに、「本物の戦艦大和も議会に提出した建造費は、実際の予算の、おおよそ半分だったのですよ。そして、足りない分は、潜水艦や駆逐艦を何隻か作ることにして、実際には作らないで、その予算を流用したのですよ。この映画とほとんど同じようなことが、現実に行われていたんです。ただ、このことは極秘ですが、大蔵大臣にだけは事前に説明して、了解を得ていたそうです。」と言うような話をしたら、菅田さんは、「へーッ!」と驚いていました。
映画はよく纏まっていて、戦艦大和をテーマにした作品としては前例の無いユニークな切り口のストーリーで、楽しめました。戦艦大和や戦艦長門のCGもリアルで、とても良くできていました、何箇所かは、これは手直したら良いかも・・と言う箇所もありますが、これは大和そのものを追求した作品ではないので、あまり気にしないで楽しむのが良いでしょう。
菅田さんは、本当にすっきりしたイケメンで、背が高く、私は、“ああ自分にあと10センチ身長が欲しかったなあ・・”が心の声でした(笑)。
話も面白く、人気の高さも納得です。対談の後で、展示室を案内しましたが、沖縄特攻で亡くなられた乗員の遺書や、戦没者名簿などをじっと見ていました。時間が足りなかったので、「また来館されたら、ゆっくりご案内しますよ」、と言って別れました。
こういった、いろいろな形で戦艦大和をテーマにした作品が出来るのは。本当に嬉しく、有り難い事と思います。
この夏には、海軍や軍艦をテーマにした特別番組が4本くらいは放送される予定で、中には、大和ミュージアムでロケをしたテレビも有ります。気をつけて番組をチェックしてみてください。
大和ミュージアムは、開館から14年目に入っていますが、まだまだやらなければならないテーマや、ぜひやりたいテーマ、また集めなめればならない資料、進めなければならない調査や研究、そういったことが沢山あります。もちろん、来館者の要望にも応えていかなければいけません。大変なことも沢山ありますが、いつまでもたくさんのテーマを抱えた、忙しい大和ミュージアムでいようと思います。